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ワンライまとめ 4

??????2026-07-09 16:18:08

4


??爪と皮膚のあいだの柔らかいところ
 ばこん、と気の抜けるほど軽い音がする。同時に男は肺に詰まった空気を胃の中身と共に全て吐くかのような叫び声を上げる。男の啜り泣く声しか聞こえない厳粛な講堂には異様に目をぎらつかせる老若男女が押し詰めていた。数十人いるにも関わらず物音一つしない。ただ男の行く末を見ていた。
 また、ばこん、と音がして絶叫が響く。木製の小型の機械は器用に男の爪を皮膚から引っぺがしてしまった。公開処刑のような拷問を、貴賓席で見る羽目になったのは一体なんの冗談か。フォルネウスは欠伸を噛み殺しながら眺めていた。

 この村は元々普通の、少し貧しい農村だった。とくに潤沢なフォトンはないが、だからこそ幻獣は現れず辛うじて平和というところの。そしてカトルス教を教えれば瞬く間に村民はみな信者に染め上げられた。カトルス教への、フォルネウスから見ても異様な信仰心はたちまちに狂信となり、ほんの少し離れた間にこんな教義にないことを始めてしまった。フォルネウスとしてはカトルスという存在を知ったまま死んでくれるならどんな在り方でも興味はなかったが、ここまでおかしくなると王都にバレかねない。最悪、遺物を使用して幻獣をおびき出すことも視野にいれていた。
 ねえ、と隣にいた村長だった信者に小声で声をかける。男の絶叫。
「これには一体何の意味が?」
 村長は微笑んで答える。
「あの男は罪を犯したのです。泥棒でした。ですから罰を与えているのです」
「見世物にして、かい? だったらカトルス教の施設でやるのはやめてほしいな。そういうカルトだって思われたら困るよ」
「いいえ。これもカトルスの教えです」
 細められていたひとみには狂った炎が燃えている。男の悲鳴。これで片手の指の爪は全部剥がれてしまった。もう片方の手に移る。
「あの器具をご覧ください」
 村長は拷問に使っている木製の機械を指差す。手首と指を固定するベルトは厳重で、爪と皮膚の間をひっかける部分にだけ金具が使われている。爪と皮膚の間に金具を刺して、拷問執行人がてこの原理で金具と連動しているレバーを引く。するときれいに剥がれる。男が叫ぶ。
「あれがもたらすものは本人の痛みよりずっと易しいものです。人は爪が剥がれた程度で死にはしません。我らは彼の爪が全て剥がれたら許してやります」
「だったら尚更ここじゃなくてもいいじゃないか」
「彼はカトルス教の信仰者です。だから罰で死なせることはしない。いいえ、罪人に死ぬことは、カトルスに導かれることは許されないのですよ、フォルネウスさま」
 男の悲鳴が二人の会話を途切らせた。男は全ての指から血を垂れ流して泡を吹いている。見物人から拍手が起こる。おめでとう、罪は灌がれた、と祝福する声が飛ぶ。フォルネウスは無表情で男を一瞥したあと、一足先に講堂を出た。
 フォルネウスはそんなことくらい知っている、ボクがその罰を受けたのだからと言いたくなったが、結局村が滅びるまで口に出すことはなかった。




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