父のできなかった事を成し遂げるのが自分の使命だと思い、今まで生きてきた。でなければ、自分には存在価値などない。そう言い聞かせ、アカデミーに入学し犯行に及んだ。
「スミレ!!!!」 彼が私の名を呼んだ瞬間、私が今まで作り上げた仮面がボロボロと崩れていくのがわかった。思い出すのはアカデミーの皆と亡き母が己の名を呼ぶ声。 そこでスミレは気づいた、 あぁーー…そっか、私……
『皆の事、大好きだったんだ』
数年ぶりに溢れた涙を拭いながら、スミレは隣を走るボルトについていった。
どうするかは自分次第だと、皆が言った。こんな大罪人に対してなんとお節介な…そしてなんと優しい人達なんだろう。どうするべきかなんて、ほんとはわからなかった。父の呪いが解け、自由になったのかもしれないが…よくわからないでいる。シノ先生からはアカデミーに戻らず、別の道もあると先生らしく話してくれた。 自分がアカデミーに戻ったとしても周りの皆はどう思うだろうか。今回の事件で自分が他に何か壊してしまったものがあったらと考えるだけで夜も眠れなかった。…しかしアカデミーの皆が優しい人達なのはよく知っていた。 だから尚更どうしていいか悩むのだ。こんなとき、彼ならどうするだろうか、ただ真っ直ぐ生きる彼だったらどの道を選ぶかな。 「ねぇ、君がもし私だったら…どうしてた? ーー…ボルト君。 」 誰も答えてくれない部屋で1人苦笑いを浮かべた後、スミレは寝台から立ち上がった。
「シノ先生?」 ああ、皆の声が聞こえる。あれから考えて考えて、自分の答えを出した。でもいざここに立つと、今までの事がよみがえる。皆に嘘をついて騙して日々を生きていた。父の無念を晴らすため、というのもただ自分が逃げていただけだったのかもしれない。全てを失った後、前に進む道を選ばなかった時の言い訳に過ぎなかったと、今ならわかる。こんな生き方をしてきた私を咎める人もいるだろう、ここに立つことさえ許さないと言う人もいるだろう。わかってる、わかってるんだよ…でもね…私もうーーー…
「皆、ただいま。」 『スミレ?ーー!!』 クラスの皆が一直線に走ってくる。私の名を呼んでくれている。反応に困っているとチョウチョウに いつものは??ってからかわれちゃった。皆が私を取り囲んで笑ってる。 隙間から見えたボルト君の笑顔を見て目の奥が熱くなってきた。はわゎ、ダメだなぁ…涙出てきちゃったなぁ。
もしあの時別の道を選んでいたら、なんて後悔、できそうにないよ。だって今この瞬間、凄く幸せなんだもの。今までの選択がなかったらこんな幸せ、感じられたかわからないじゃない。そんな考えが身勝手だって責められても、もう大丈夫。私は全部受け止めて見せるから。
『スミレ』
ふと後ろで母の呼ぶ声がした。幻聴かな、クラスの皆の声かな、…ううん違うよね、そこにいてくれてるよね、お母さん。
『大丈夫だよお母さん、私もうーー
自分に嘘つかないから』
スミレは涙を拭いながら今だ自分を取り囲むクラスメイトにお決まりの口癖を言ったのだった。