「あれ?伝わってない感じ?」
「? 何の話ですか?」
乱数が首を傾げたのでそれに釣られて私も首を傾げる。
「げんたろー、エイプリルフールが誕生日だったじゃん?」
「それ嘘ですけど」
プロフィールを書かなければならない時は大体適当な誕生日を書いている。なるべく嘘とわかりやすいの。例えば太宰の命日とか。
エイプリルフールもそのひとつだった。まさか真に受けてたとは。
しかし乱数はあっけらかんと「あ、やっぱり? まあどうでもいいよそんなこと」と言ってのける。前提がどうでもいいとは何事か。
「で、そのことに最近気付いたから、折角だしなんかあげようかぁ、って帝統とこの前飲ん だ時に言ってたんだよね」
「いつの話です?それ」
「先週の、幻太郎が編集と打ち合わせあるからって来なかったとき」
「それで、花と花瓶ですか」
二人にしては随分と真面目な物だった。いや乱数好みの派手な色合いのゴッツい花瓶は一人暮らしのザッパな部屋には浮きまくってたけど。花より目立ってどうする。
「いいでしょぉ。ボク達らしくって。花はいつか枯れちゃうし。花瓶も派手に割れるからストレス発散にいいかもねぇ」
「割りませんよ」
自分でも思いの外大きい声が出てびっくりした。乱数も驚いて目を見開いている。
「割りませんよ」
もう一度、今度は落ち着いて言う。乱数は満足げに笑った。「中身空っぽでもいいの?」
「帝統にまた拾わせてきたらよろしい」
「アハハ。今度は雑草でいっぱいになっちゃうね」
帝統のことだし、食べれる野草ばっかり拾ってくるかもしれませんよ、と言うと乱数はさらに声を上げて笑った。